大阪・阪急ホテルのレストランでメニューに表示された食材と実際に使われていた食材が異なっていたことが判明し、世間を驚かせました。そして、阪急ブランドの信用を失墜させたに留まらず、他のレストラン事業者や百貨店事業者にも同種の偽装があることを浮かび上がらせ大きな波紋を呼んでいます。
偽装が発覚した多くの事業者では、責任者が記者会見を行い、お詫びと併せて、偽装に至った経緯について、決して意図的にごまかそうとしたのではなく、現場と営業部門との意思疎通を欠いていた、あるいは、現場に思い込みがあった、などと説明していました。
真実がどうなのか判りませんが、多くの市民が不信感を抱いたのは紛れもないことです。
しかし一方、阪急の件が明るみに出たとき、「他でも同じようにやっているのと違うの?」という声が上がり、後から次々と同様の偽装が報告された時には、多くの人が「やっぱり」という反応を示したのも事実です。
私たちは、つい8年前に姉歯事件という建築の構造計算偽装を経験しました。それから舌の根も乾かぬうちに、今度は極めて信用度の高い大企業による新たな偽装事件が発覚したわけです。あの時の怒りや反省はどこに行ったのでしょうか。
偽装は、ひとつ間違えば人の命にかかわるという意味では、食品も建築も同じです。今後、二度とこのような事態を招かないためには、提供する側、利用する側どちらも、モラルの基本に立ち返ることは言うまでもありませんが、確かなコスト感覚を持ってモノを見、判断することが必要ではないでしょうか。
大変難しいことですが、ただ安ければ良いということではなく、常識的にありえないような条件でモノが提供される場合は、素直に「なぜ?」と疑問を発し納得できるまでは手にしない、そんな習慣を築きたいものです。