昨年の夏から進めてきた都心にある複合ビルの大規模修繕が、調査診断から設計のプロセスを終え施工業者選定を迎えています。
年末に6社より見積もり徴収した後、3社を選んでプレゼンをしてもらったところ、表面上の見積もり金額の差以上に内容に差があることが判明しました。
この建物はビジネス街のど真ん中に位置しており、北側が交通量の多い道路に面し、その他3方はわずか約20~30cmの空きで隣地と接しています。したがって工事に際しては足場設置や資材搬出入をいかに安全に効率良く行うかがポイントとなります。
幸いなことに隣地の一方が時間貸しの駐車場になっており、そこを上手く活用できれば課題の多くは解決できます。プレゼン参加ゼネコンは各社とも駐車場を必要期間借用して工事を進める予定で見積もりを作成していましたが、その数値に驚くほどの違いが見られました。
工事費総額で1番安いA社は自社で想定した1台当たりの月極め賃料をもとに必要台数分の工事期間中借り上げ費用を算出計上、2番手のB社は当該モータープール運営会社の本社担当にヒアリングした数値をもとに費用計上、そして3番手のC社は当該モータープール運営会社の現地担当にヒアリングした数値をもとに算出計上していました。それで前述の差が生じたわけです。この数値如何で工事費総額の順位が入れ替わることもあり、理事会で大変な議論になりました。その結果、再度、詳細な仮設計画・安全対策の提示と駐車場借り上げ費用を再確認したうえでの工事費用の提示を求め、再考することになりました。
全体のスケジュールは少し変更になりますが、安心して工事を進めるための大変意義ある選択だと思います。
今回の例は都心立地の厳しい敷地条件からもたらされた特殊な事例ということになりますが、住宅地のマンションでも個別の敷地条件はすべて異なります。
大規模修繕の取り組みで最も大切な施工業者選定は、単純に工事費だけで選ぶのではなく、必ず内容を自分たちのマンションの抱えるさまざまな条件に照らし確認したうえで、選考決定してください。