記事一覧

工事の瑕疵責任について・・・

先週、2つの管理組合の理事さんから偶然にも同じ相談を受けました。
どちらも築後約10年を経過するマンションで、建物に不具合の生じている場所があり、その原因が最初の施工にあるのではないかと思っているけど、どのように対処すれば良いのでしょうか?というものでした。

このような話はよく耳にしますが、非常に難しい問題です。建物の仕様は様々で、予算や求める性能によっておのずと変わりますし、同じ仕様でも、使い方や建物条件によって劣化や不具合の出方は異なります。
したがって、不具合は施工上の瑕疵であるから改修するように、と分譲事業者側(施工者も含む)に迫ってもなかなか簡単には応じてくれません。
そして係争となると、非常に長期化し大変なエネルギーを消耗することになります。
また、時間が経過していく中で建物の経年劣化が進行し修繕周期を迎えても、係争中であることで十分な修繕が行えなかったりします。
さらに、長い時間と費用を費やして出された結論が、管理組合にとって有利なものになるかどうかは予断を許しません。

このように考えると、分譲事業者側と長期に亘るような争いを選択するのは決して得策とは言えない場合が多くあります。
もちろん、建物の存続に関わるような致命的な不具合や、意図的な手抜き等の明確な瑕疵については徹底的に改善要求をすることは当然ですし、原因が不明確であっても不具合の生じている部分について、事業者側に説明と対応を求めることは必要です。
しかし、一定期間が経過しても結論が得られない場合には、管理組合として事業者側と争うことの費用的なリスクや人的なリスク、スケジュール上の問題、などを併せて総合的な判断を下さなければなりません。

このような、工事にまつわる瑕疵というのは大変難しい問題で、大規模修繕工事においても起こりうることですが、問題を大きくしないためには、信頼できる設計者や施工者を選ぶことを何より大事なポイントとしつつ、それでも発生した時のスムーズな解決のために瑕疵保険制度の活用によるセーフティネットを用意しておくことも必要ではないでしょうか。